ハリーの災難
「ハリーの災難」 製作:1955年/アメリカ
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監督:アルフレッド・ヒッチコック 製作:アルフレッド・ヒッチコック 原作:ジャック・トレヴァー・ストーリー 脚色:ジョン・マイケル・ヘイズ 撮影:ロバート・バークス 美術:ハル・ペレイラ ジョン・B・グッドマン キャスト:エドモンド・グウェン ジョン・フォーサイス シャーリー・マクレーン ミルドレッド・ナットウィック |
ヒッチコック作品の中で一番好きな作品です。
当時ビデオを2本に分けて録画してしまい、後半20分ぐらい収録のものは
今もあるのですが、前半の方がどうしても見つかりません。
仕方が無いので、購入したもののまだ観ていないDVDを観てみました。
ところがこれも途中で機械が故障してしまい、パソコンで観るはめになって
しまいました。
あらすじは書かない方がいいのでしょう。
撮影や演出などの技術面についての感想は残念ながら力不足で書けません。
ヒッチコック作品は、ただただ“楽しむ”のみです。
この作品は当時ヒッチコックの作品としてはあまり評価されなかったと
聞いています。
きっと異色過ぎたのでしょうね。
したがって、一般的にはその他の多くの作品に埋もれて有名でないのかも
しれません。
とにかくヴァーモントの景色が素晴らしい。
丘や村の紅葉・黄葉が、澄んで抜けるような青空の暖かい空気のもとで
絵のように綺麗です。
その陽のあたる小高い丘に死体があります。ハリーです。
周りの情景のためどうしても陰惨な感じがしません。
何となく幸せに眠っているように見えたりして・・・。
その死体の靴の底の大写しから物語りは始まります。
住人の元船長(E・グウェン)、中年の婦人グレブリー(M・ナトウィック)、
画家のマーロー(J・フォーサイス)そしてハリーの夫人といってもほとんど
名ばかりだったジェニファー(S・マクレーン)・・・。
どの人物もハリーの死体を見ても驚くことが無いのが、少し不気味に感じられる
もののあの牧歌的な風景の中では自然なように思えてくるから不思議です。
話が進むうちに、それぞれが自分が殺したのではないか、殺したと疑われるので
はないかと思っていることがわかっていきます。
それでもあまり切実感とか緊迫感とかが無く、なんとなく寓話の中で遊んでいる
大人たちのような・・・。
ハリーの死体を埋めながら、お互いの恋愛談義をする元船長と画家・・・。
初めて家に訪れてくれた画家にすっぱい顔をしながらやたらしつこくレモネードを
すすめるジェニファー・・・。
レモネードの印象が強く、私の中では「ハリーの災難」=レモネードになって
しまっています。
そう言えば、「刑事ジョンブック 目撃者」でもレモネードが出て来ます。
アメリカの田舎にレモネードは付き物なのでしょうか。
死体を前にしたグレブリーが元船長をお茶に誘い、浮き浮きした気分でつい
死体を跨いだりするのが何とも微笑ましい。(不謹慎?)
その後、お店で出会った画家におしゃれの手ほどきを受け、カップを買って
(代々伝わっているものと元船長には嘘を言う)・・・。
二人のお茶のシーン。
今回は、皮肉ではないのに死体の話題が出るたびに反応する元船長がおかしい
ですね。
ビデオを観た当時(放映された当時)の年賀状に“理想の生活はグレブリー”
と書いた記憶があります。
あの絵のような景色の中に建つ小さな小屋のような家。
屋根付きのベランダには陽がさしていてマフィンを食べながらお茶を・・・
というのんびりした穏やかな生活が素敵に思えたものでした。
後半は、シーンが変わると画面が暗転することが多くなっていきます。
その度にCMをカットしたのかとつい思ってしまうのはテレビの観過ぎで
しょうか。
一瞬の暗転時パソコンの画面に自分の顔が映りますが、その顔が笑って
います。
昔、頻繁に映画館に通っていた頃、何気なく顔に触ると悲しい映画でも
自分が笑っていることに気がつくことがありました。
自分の映画好きを実感したものですが、あの頃の自分をちょっと懐かしく
思い出しました。
“ハリーの災難”とは、結局彼等のその時の都合によって何度も埋められ
たり掘り起こされたりしたことなのでしょう。
生きている人間より死んだ人間の方が苦労しているようで何とも皮肉では
あります。
誰が犯人か、どういう結末かは書かない方がいいのでしょう。
最初に死体を発見したのはジェニファーの息子ですが、ラストも又
“明日を今日”と考えてしまう彼が死体を発見することになります。
それにしても極端に住人が少ない村で、登場人物だけが住んでいるように
見えます。
主要人物がそれぞれにカップルになっていきますが、スコップを抱えて歩く
4人の姿はやはりメルヘンの世界の住人のようです。
売れない画家だったはずが急に売れることになり、その代価がジェニファー
には季節のイチゴ2箱・・・などと周囲の人々のためのささやかな要求なのが
何ともほのぼのとしてよかったですね。
そういえば、丘から見下ろす景色はドラマ「風林火山」を撮影してもおか
しくないような、音楽も似合っているし、などとと思ってしまいました。
最後に死体を検案する医者は森本レオ氏に似ている、と今回初めて気が
つきました。
新発見のような、余計なような・・・。
この作品は、マクレーン(当時20歳)のデビュー作だったのですね。
決して美人ではないけれど初々しくて、画家から結婚を申し込まれる
(たった一日の出会いなのに!)シーンは可愛かったですね。
ハリーからやっと自由になれたのに、と思ったけれども“世界一自由な
夫婦になろう”と言われて・・・。
ナトウィックは、確かNHKのTVシリーズで中年姉妹が謎解きをする
というドラマ(タイトル?)がありましたが、その妹役でとぼけた感じが
楽しくて印象に残っていました。
こうしてみると、私は寓話っぽい作品が好きなようです。
映画は元々作り物ですが、同じ作り物ならどんな作品であってもその作品
から受け取れるものが“幸せな感覚”であってほしいと思っています。
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