NHK金曜時代劇「十時半睡事件帖“走る男”」
NHK金曜時代劇「十時半睡事件帖“走る男”」
NHK総合テレビ 1995年12月9日(再放送)45分
<本放送 1994年9月~1995年3月>
原作:白石一郎 出演:島田正吾(十時半睡) 渡辺いっけい(力石勝八郎) 池内淳子(井筒屋のおたき) 長門勇(骨董屋・山水堂) ? (勝八郎の妻・おまち) 河原崎長一郎(十時の家来) 坊屋三郎(十時の下男) |
ビデオレコーダーが壊れて新しく買い換えたため、再生が更にひどい状況になって
しまいました。
画像と音声の劣化に加え、ブレもひどくなり観終わるまでに苦労をしました。
その上に、最初だけではなく最後も1、2分ほど切れていましたし・・・。
出演者の紹介があやふやなのはそのせいです。
あらすじ・・・
福岡藩の総目付(隠居で非常勤)十時半睡(とときはんすい・島田正吾)の屋敷に
力石勝八郎(渡辺いっけい)の妻がおたき(池内淳子)に伴われて訪ねて来ます。
力石は十日に一日のお城勤めで、その一日もひたすらジッと座って時間を過ごす
ようなもの・・・。
それに飽きたらず、彼は様々な道楽(書道・能・絵など)にはまっては止めるの繰り
返しで、妻はその後始末で借金もし、ついに日々の暮らしにも事欠くようになります。
妻がどんなに諌めても聞き入れられず離縁を考えるまでに至り、それを見かねたのが
おたきでした。
十時は力石を呼んで話を聞きます。
“心から打ち込めるものがほしい”
“誇りを持ちたい”
“生きている実感がほしい”
“何かの役に立ちたい”
“誰も持っていない何かを持ちたい”
“他人より優れるものを持ちたい”
“これでいいのか、本当にしたいのは他にあるのではないか”
総目付の前で小さくなりながらも彼は訴えます。
挙句の果てに、もう疲れたから坊主になりますとも・・・。
十時は叱り、そして諭します。
“誰から見ても意味の無い、何の役にも立たないことをやってみろ。
自分で探せよ”と・・・。
あらすじの続き・・・
朝もやの通り、襷をかけ着物の裾をはしょって走る力石の姿があります。
汗だくで帰宅すると、妻が嬉しそうに迎え甲斐甲斐しく世話をします。
毎日走り続けると、侍が続き更に町人が続いていきます。
“あいつめ、とうとう見つけおったな”
評判を耳にした十時でした。
門の外で姿を見た力石に問いかけます。
“どうして走る?”
“考えあぐねていたところ、無心で走る子供たちを見て思いつきました”
“楽しいか?”
“楽しいとか楽しくないとかそのようなことのために走ってはなるまいと存じます。
ただただ走ります”
彼の後を追い、十時の家来やおたきまでもが走り抜けていきます。
思わず走り出そうとする十時、下男(坊屋三郎)がそんな無茶なと・・・。
この番組は本放送で観て印象に残り、再放送を録画したものです。
あらすじが長くなってしまったのは、力石の思いを削れなくなってしまったので・・・。
当時、力石に自分を重ねて観ていました。
彼のように何をやっても水準以上のものを得られたり、大金を使ったりはしません
でしたが・・・。
彼の焦燥感がわかる気がしたものです。
十時が彼を諭す時に、後ろの床の間の掛け軸の文字「求不得苦」について語ります。
人には欲がある。
それを求めて、求めても求めても結局得られるものは「かなえれぬ苦しみ」だけ。
この言葉が気になって調べてみたものです。
四苦八苦という4文字熟語がありますが、元々仏教言葉で「求不得苦」はその中の
一つとのこと。
当時この言葉をかなり意識していたはずなのに、今回このドラマを観るまですっかり
忘れていました。
欲への追求も年を重ねて減速してしまったということでしょうか。
以下、引用です。
人は誰だって年を取りたくないし、病気になりたくない。
できたら無病息災で一生暮らしたいと思っている。
しかし、お釈迦さまはしごくあっさり、「不可能」と断言する。
いわゆる生・老・病・死・
愛別離苦(愛する者と別れなくてはいけない苦しみ)・
怨憎会苦(嫌な奴と一緒に生活しなくては、あるいは出会わなくてはいけない苦しみ)・
求不得苦(自分の欲するようにはならない苦しみ)・
五蘊盛苦(身体が調子良すぎて、いろいろ失敗する苦しみ)
の四苦八苦は、どんなに時代が進んでもなくならないというのだ。
―「賢愚のすすめ」藤原東演・PHP研究所―
島田正吾さん、「ひらり」に続いての人生の先達役で飄々として暖かく一つ一つの
言葉が深く響きます。
渡辺いっけいさん、この頃からすでに安定感があり、見た目も今と変わりません。
そして妻役の女優さん、申し訳ないのですが、顔は知っているのですが名前を知り
ません。
忘れたわけではありません。
ちょっと地味で主演クラスでは観たことがありませんが、今なら西田尚美さんタイプ
でしょうか。
ついでといっては何ですが、西田尚美さん、「ナビィの恋」が印象に残っています。
今度大河ドラマ「風林火山」でGackt演じる長尾景虎(後の上杉謙信)の姉役で
登場です。
だんだん華やかになっていきますね。
とても楽しみにしています。
漫画家(アンパンマンの原作者)で詩人のやなせたかしさんの詩にこんなものが
あります。
いままでに
いくつも
星をひろったけれど
朝になってみると
みんな
ただの石ころに
なっていた
そんな石ころが
ずいぶんたまった
昔は
星だったのにね
―詩集 愛する歌 第3集―
まったく別々に書き残していた文章なのに、今回初めてこの詩と「求不得苦」とが
繋がりました。
2007.7.31.<追記>
原作本を取り寄せて読んでみました。
未だに増刷されていることに驚きました。
大筋のストーリーにはあまり変わりはありませんでしたが、池内淳子さん演ずる
おたきは登場せず代わりの役目は十時の息子の嫁が担っていました。
ドラマの方が、動きや広がりなどやはり映像的になっていたと思います。
ドラマには軽妙洒脱な空気感がありますが、小説の方は静かで端然とした感じが
しました。
ただ、ラストの力石の答えがドラマではあっさりしすぎてわかりにくかったのですが
原作を読んでスッキリしました。
意味も無くただ走っているうちに、それだけのことにもいろいろと創意工夫があって
面白く夢中になってきたこと。
ただ走ることにくらべれば何事も面白いはずだと思われてきて、ものの見方や考え
方が変わってきたし、仕事も感謝して勤めるようになったこと。
・・・でした。
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