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椿三十郎

    「椿三十郎」 製作:1962年/黒澤プロ、東宝

       椿三十郎<普及版> [DVD] 監督:黒澤明
原作:山本周五郎
脚本:菊島隆三・小国英雄・黒澤明 
撮影:小泉福造・斎藤孝雄
音楽:佐藤勝
美術:村木与四郎

    キャスト:
     三船敏郎 (椿三十郎)
     加山雄三 (井坂伊織)
     平田昭彦 (寺田文治)
     田中邦衛 (保川邦衛)
     土屋嘉男 (広瀬俊平)
     仲代達矢 (室戸半兵衛)
     小林桂樹 (見張りの侍)
     入江たか子 (睦田夫人)
     団令子 (娘・千鳥)
     清水将夫 (菊井・大目付)
     志村喬 (黒藤・次席家老)
     藤原釜足 (竹林・国許用人)
     伊藤雄之助  (睦田・城代家老)

★一言コメント★
黒澤明監督の傑作娯楽時代劇です。
リメイク版(織田裕二主演)が公開されたということで、記念(?)に観てみました。

★あらすじ★
椿三十郎(三船敏郎)は上役の不正を暴こうとする9人の若侍(加山雄三ら)と知り合い、彼らの頼りなさについ味方をすることになります。
正義だけで突っ走る若侍たちを助けて、凄腕の剣と知略を駆使しながら誘拐された城代家老たちを救い出すために奔走します。
ことが解決して向かえたのは、敵側の用心棒室戸(仲代達矢)との決闘・・・。

★おすすめポイント★
・この作品は、「用心棒」(1961年)とともにリアルタイムで観ています。
そのことに驚くとともに、ちょっと自慢かもしれません。

・「用心棒」は殺伐として、特にジェリー藤尾さんが腕を切られるシーンがショックでさすがに引いてみていた記憶があります。
盗作騒動(マカロニ・ウエスタン「荒野の用心棒」)などもあり、とにかく話題が多かった作品でした。
作品的には「用心棒」の評価の方が高かったような気がしますが、個人的には「椿三十郎」のユーモア溢れる感覚が好きでした。
今回もビデオを観始めてすぐに、自分の顔がほころんでいるのがわかりました。

・三船敏郎の圧倒的な存在感は素晴らしいです。
モノクロなので、登場シーン(お堂の中で、若侍たちの会話を耳にして登場)が「第三の男」のオーソン・ウェルズのようでした。
若侍が9人なのに、それを一人で上回る圧倒的な存在感・・・。
織田さん、大丈夫でしょうか?
余談ですが、織田さんは注目している俳優の一人ですから評価が気になります。

・一番好きなのは、救い出した奥方(入江たか子)とのシーンです。
何事にも動じないであくまでおっとりしている奥方に、三十郎は苦手意識と敬愛の気持ちとを持ち合わせているようで、会話や行動が微笑ましくいちいち笑わせます。
名前を聞かれ、庭の椿を眺めて「椿三十郎・・・もう少しで四十郎」
奥方と娘がおっとりと会話し若侍たちがそれを囲み、その後ろで彼一人ふすまの文字をなぞっているシーンなど・・・。

・入江たか子さんは良い家柄の出身でしたが、化け猫映画というジャンルの作品に出演したことがあって“化け猫女優”として有名でした。
イメージが固定して大変な時期があったとは思いますが、この作品では品があっておっとりとして存在感がありました。
この品の良さを中村玉緒さんは出せるのでしょうか。
誰にとってもプレッシャーになっているだろう、今回のリメイクです。

・その次が、小林桂樹さん(敵方の捕虜)のシーンでしょうか。
押入れの中に監禁(一応)されているのですが、若侍たちの論争の中に入ってきては適切なアドバイスをしたり諌めたり、最後は成功を一緒に喜んだりしては押入れに戻っていきます。
改めて観てみても、コメディ部分の多い作品です。
出来る人物なのですが、長い顔のせいでもうひとつ人望が無いと本人も認める城代家老(伊藤雄之助)の最後のセリフ「乗った人より馬は丸顔」はやはり笑えます。
実際の伊藤雄之助さんも顔が長いのが特徴でしたから、ワンシーンなのにとても目立ったものです。

・加山雄三さんと田中邦衛さんがよく衝突をするシーンがありますが、若大将シリーズを思い出させました。

・さすがにユーモアだけではなく、殺陣の素晴らしい部分もあります。
あまりにたくさんの人間が斬られるので、個人的には目を塞ぎたくなりますが・・・。
理屈抜きに痛快な娯楽時代劇なのですが、フッと引いてしまうのは趣味の問題で仕方がありません。
ラストの決闘シーンは、あまりリアル感が無くてそのまま観ていられましたが・・・。
このシーンは、当時賛否両論があったと記憶しています。
この後、伊織(加山雄三)が「お見事!」と声をかけて叱責されますが、彼の若さ・未熟さが際立ったシーンでした。
三十郎の苦渋の思いがわからなかったわけですから・・・。
当時も、突っ込み(当時はこんな言い方は一般的ではありませんでしたが)を入れたかったことを覚えています。
奥方に“良い刀は鞘に納まっているものです”とやんわり窘められるシーンがあります。
鞘に納まることが出来ない人間が、そういう道を歩かないように諌めて肩をいからせて去っていくという、徹底的に娯楽にこだわって気持ちの良い終わり方でした。
最後、土下座して礼を言う若侍たちの姿にジーンときた私はずいぶん涙もろくなったものです。

・小屋の中で三十郎が荷車に横になり、その前に9人が立っているシーン。
荷車の隙間から三十郎の背中と9人の顔がすべてハッキリ見えて画面に納まっているその撮影の見事さに驚きました。
ビデオ(日本テレビ放映時録画)の解説者の水野晴郎さんは、9人が除けると奥方と娘が見えるというシーンのパンフォーカスを絶賛していましたが・・・。
敵の馬や槍の部隊が屋敷を出てきて、その前を三十郎が横切るシーンのアングルは圧巻でした。
三十郎とその列そして屋敷の門を斜め上に撮影していて(別撮りの合成?)今ならCGを使うのかもしれないなどと思ってしまいました。

・赤と白(モノクロなので黒と白)の椿の使い方も素晴らしい。
当時、黒澤監督がかなり凝ったと聞いています。
「第三の男」と同様に、モノクロだからこそ見えるものってあるのだと思います。
同じ黒澤監督の「天国と地獄」(1963年)の煙突の煙(モノクロ映画で、その部分だけカラー)を思い出しました。

・今回、「用心棒」では無く「椿三十郎」の方をリメイクしたのは良かったのではないかと思います。
ユーモアのある重厚な本格的娯楽時代劇として、今の若い人たちも充分楽しむことが出来るのではないでしょうか。

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三船敏郎;仲代達矢;加山雄三;団令子;志村喬;田中邦衛, 黒澤明

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