武士の一分
「武士の一分」 製作:2006年/松竹配給
監督 : 山田洋次
原作 : 藤沢周平「盲目剣谺返し」
脚本:山田洋次・平松恵美子・山本一郎
撮影:長沼六男
音楽:冨田勲
キャスト:木村拓哉 檀れい 笹野高史 桃井かおり
坂東三津五郎 緒形拳 小林稔侍
★一言コメント★
お正月を静かに過ごしたい時にピッタリでした。
★あらすじ★
藩主の毒見役を務める侍、三村新之丞(木村拓哉)は妻・加世(檀れい)と慎ましくも幸せに暮らしていました。
しかし、毒見した貝の毒に中り、一命を取り留めたものの失明してしまいます。
絶望しながらも、禄も維持され、中間の徳平(笹野高史)と3人で以前と変わらずに平穏に暮らしていけるはずでした。
ある日、加世が男と密会をしているという話を聞き、徳平に後をつけさせて、相手が上司の島田(坂東三津五郎)と知ります。
泣く泣く加世を離縁したものの、その後島田が禄の維持に力を貸すと騙したことを知り、島田に果し合いを求めます。
★おすすめポイント★
・山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」に続く時代劇3作目にあたります。
情景描写が静かで細やかで、前2作同様に淡々としていて間合いが何とも心地よく感じました。
家の全景を引きで撮影して、人が静かに動き、落ち葉が静かに散る様子などとても印象的です。
飛び交う蛍、犬の声や虫の音などが微かに聴こえて、3人に流れる静かな時間も・・・。
後半の季節が秋ということで、果し合いの時も含めて落ち葉が舞うシーンが多くて、観入ってしまいました。
・果し合いのシーンがクライマックスなのでしょうが、内面とは別に表面的にはそこに向けて盛り上げた作りになっていないのが良かったと思います。
相手を最後まで追い詰めることなく、後は運命に委ねて、又元の静かな生活に戻っていく、ということも・・・。
・木村拓哉さん
最初の方はオーラが気になったり、「えっ」などのセリフが現代風に聴こえて違和感がありましたけれど、頑張っていたと思います。
“いつでも、キムタク” からは一歩抜け出ていたような気がします。
今後どの方向に進むのかわかりませんが、俳優としては悩むところなのかもしれません。
テレビドラマの延長では無く、アラン・ドロンの作品のようなもの、屈折した若者役から始まってモテモテ役からギャング役まで、それも山田監督で撮ることがあったら観てみたいものです。
山田監督にとっても冒険でしょうが・・・。
・檀れいさん
NHK「陽炎の辻~居眠り磐音 江戸双紙~」で初めて観ました。
この映画の公開当時は、私の中では無名で“大丈夫?”とか思ったものですが、夫思いで控えめだけれども芯の強い女性を堂々と演じていたのですね。
がんす言葉がとても心地よく聴こえました。
・笹野高史さん
テレビでは度々観ている俳優さんですが、この作品での日本アカデミー賞最優秀助演男優賞受賞を他人事ながらとても嬉しく思っています。
今は脇役の俳優さんが光っている時代ですね。
3人で作る3角形の1辺を担って、出過ぎずそれでいての存在感が素晴らしかったです。
全編を彼の目線で観ていたような気がします。
・山田洋次監督
寅さんシリーズは好きではありませんでした。
寅さんの甘えとその裏にある孤独が見えて、笑えませんでした。
山田監督が時代劇、それも藤沢周平ものと聞いた時には意外な気がしたものですが、今は正解だったと思います。
原作を読んでいませんが、藤沢周平色の上に山田監督のカラーが出ているのでしょうね。
定められた運命の中で淡々と自分の人生を全うしていく人々を突き放さない、暖かい視線が感じられました。
・この3部作の中では、特にあまり評判を聞かなかった「隠し剣 鬼の爪」が一番好きです。
永瀬正敏さんの魅力を再確認したような作品でもありました。
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