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「あしたの、喜多善男」最終回を観て

あしたの、喜多善男~世界一不運な男の、奇跡の11日間~」(フジテレビ)は18日が最終回でした。
ここ2回分の録画ビデオは、なかなか時間が取れなくて夕方にカーテンを閉めて観ていました。
これが意外に集中出来て、病み付きになりそうです。
ただし、作品によるとは思いますが・・・。

ネガティブな自分を吸収して、みんなの思惑も全て知っていたことを認めながらもやはり死のうとしている喜多善男(小日向文世)。
元妻のみずほ(小西真奈美)と唯一心が通い合った因縁の場所での死を選びます。
でも、彼に生きて欲しいと願う人たちがそれぞれに出来る方法で少しずつ力を合わせて彼の行く先を突き止めます。
追いかけたのは平太(松田龍平)ですが、そこにはみんなの思いが凝縮しているわけです。

断崖に建つ一軒家の煙突の上に立つ姿から、草なぎ剛さん主演の「僕の生きる道」(2003年・フジテレビ)を思い出しました。
草なぎさんも断崖に立ち、両手を水平に広げていました。
どちらも宗教的なものを感じました。
「僕生き」には小日向さんも主治医役で出演していて、その存在感が作品をより奥深いものにしていました。
それにしても海を臨む屋根での平太とのシーンは、私が高所恐怖症なので観ているのがつらかったものです。
それでも情景が綺麗でしたし、何より目が離せないシーンでした。
平太も喜多を思い止まらせることに懸命になることで、自分の自殺した父親への本当の気持ちを確認することになります。

形の上では“カレーを作って欲しい”で自殺を思い止まったのがよかったと思っています。
理由や格好良さなどどうでもよいのです。
とにかく生きていれば、それは悲しいことや辛いことがたくさん待っているかもしれませんが、時には幸せを感じられることだってあるはずですから・・・。
何より、おかあさん(加藤治子)を残して逝ってはいけません。
明日を生きることを決めて、お母さんに宛てて手紙を書いているのがよかったです。
素直な子供に戻っていました。

喜多の言葉に救われたリカ(栗山千明)は、自分は悪い人間だからと平太の元を去りますが、きっと平太は彼女と別れないでしょう。
彼女の後姿に“電話する”と声をかける、彼の優しさが溢れていて好きなシーンでした。
そして、喜多が警察の前でみずほを待ち、お互いに何も語らず別れていくシーン。
これから、それぞれに本当の自分の人生を歩いていくことを感じさせるシーンでした。

喜多本人は気がついていなかっただけで、この11日間で彼を気にかけている人たちが大勢いたのです。
平太とは別に、彼の救いになっていたのかもしれない宵町しのぶ(吉高由里子)の他にも、最後までキャバクラの女の子たちが印象的でした。
そして、保険調査員の杉本(生瀬勝久)とその部下の2人。
この2人のシーンは空気が変わっていて結構好きでした。
初めて、生瀬さんを役がらみで格好いいと思いました。

ラストで、服もバッグも一新して就職活動を始めようとする喜多善男。
そして路上でいつものように待つ平太。
どう見てもそうは見えないのに友達なんですよね。
陽射しが明るくて、雑踏の中の2人はまるで少年みたいです。

ずっと観続けてきて、特に喜多善男には微かに不快だったりイライラしたりしていつもどこか胸にザラザラした物を感じていました。
それは、私自身の中にある負の部分を見せられている気がしていたからなのかもしれません。
最終回は綺麗にまとめた感じになっていて、正直ホッとして救われた思いになりました。

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