デルス・ウザーラ
「デルス・ウザーラ」 製作:1975年/ソ連・モスフィルム
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監督:黒澤明 原作:ウラジーミル・アルセーニェフ 脚本:黒澤明 ユーリー・ナギービン 撮影:中井朝一 ユーリー・ガントマン フョードル・ドブロヌラボフ 音楽:イサク・シュワルツ 出演:ユーリー・サローミン マキシム・ムンズク シュメイクル・チョクモロフ *アカデミー外国語映画賞・モスクワ映画祭グランプリ他受賞 |
★一言コメント★
黒澤監督が、シベリアの大自然とそこに生きる人々を描いたドキュメンタリー風の作品ですが、個人的には老いについて考えさせられた作品です。
★あらすじ★
1902年シベリアの奥地を地誌や測量調査のために探検していたソ連の軍人アルセーニェフがそこで偶然デルス・ウザーラという猟師と出会います。
家族もなく、家も持たない彼は、まるで森とともに生きているかのように、その土地の生き物や自然を知り尽くしていました。
虎のような猛獣や猛吹雪や寒さ、飢餓との闘いなどあらゆる危険を乗り越える知恵と力を持ち、けっして人を騙したりせず、猛吹雪からアルセーニェフの命を救ってもその代償を要求することはありませんでした。
彼の人間的な魅力に魅せられてしまったアルセーニェフは、この土地を調査探検する時は必ず彼をガイドとして雇うようになります。
しかし、そんな彼にも勝つことのできない敵、「老い」が襲ってくるのです。
★おすすめポイント★
・20世紀初頭、シベリアの地誌調査を行った探険家アルセーニェフの探検記を元に、彼とそのガイドを務めた老猟師との厚い友情を広大なシベリアの大地を背景に描いた超大作です。
この作品の映画化を長年温めていた黒澤明監督ですが、国内では製作することが出来ず、ソ連(当時)のバックアップで準備と撮影に2年半を費やして完成させました。
監督にとって初の海外映画であり、初の70ミリ作品でもあります。
・舞台となったシベリアの大自然の映像に圧倒されます。
前半、凍る湖上で隊長のアルセーニェフとデルスが足跡を見失ってしまうシーン・・・・
変わりゆく天候の中、果てしない氷の海を彷徨う二人、そして沈みゆく太陽と吹きすさぶ風の中、日が落ちる前に必死に枯草を刈り集めての野営の準備。
襲い掛かる自然の脅威の中にひとたまりも無く消えそうな人間たち。
気を失った隊長は、翌朝眩しい太陽の下、測量機材の三脚を支えにした枯草の中で目覚めます。
・特に素晴らしいのは、赤い太陽の下、周りは漆黒の闇、シルエットとなって進む彼らの足元の氷の上だけが赤く照らされている、厳しくも幻想的なシーンがあります。
息を呑むような美しいシーンです。
完璧主義者と言われた黒澤監督でも、この作品では大自然には素手でしか向かえなかっただろうと想像してしまう大変な撮影だったと思われますが、このシーンはどのようにして撮影したのでしょう。
まずは基本的に、膨大な時間を持てたということ、ソ連側の絶大な信頼やバックアップがあればこそ、ということでしょうか。
・公開当時、大自然の映像とともに、特に印象的だったのが、デルスの老いに関するシーンでした。
どんなに大自然の中で生きる知恵や体力があっても、老いはやってくるということ。
今回、私自身その老いを嫌でも考えないわけにはいかない時期に来て、改めて観るのはちょっと不安と言うかちょっと避けてみたい思いがありました。
しかし、意外なことに若い時に感じた不安と現在の不安との間にはあまり差がないように感じました。
歳をとると、(あくまで個人的にですが)若い時のように常に研ぎ澄まされた神経でいる(神経質とも言いますが)ということも無く、ちょっと鈍くなってしまっていて、それが良い方に作用しているのかもしれません。
・前半で、40年も森で暮らしていた中国人とのエピソードがあります。
弟に女を取られて、そのまま森に入り暮らし続けていました。
デルスも、家族を亡くして森で暮らさざるを得なかったのですが・・・。
中国人は、隊長とデルスに逢ったことをきっかけに、一晩考えて森を出て帰って行きます。
彼のその後が、正直暗澹たる思いがして気になります。
・後半、再会をして楽しい時期(秋)を過ごします。
のどかな音楽をバックに写真を撮り重ねていく二人が幸せそうです。
冬に入って、事態は変わります。
デルスは虎を誤って殺してしまい、虎を森の精と信じている彼は人が変わったように神経質で不安に襲われるようになります。
そして、とうとう獲物が見えなくなり、目の衰えと同時に恐怖を感じるようになります。
・デルスはアルセーニェフに誘われて街へ行きますが、彼がそこで生きられないことは最初からわかっていたことでした。
せめてと最新式銃を持たせたアルセーニェフの好意が仇となってしまいます。
デルスの死を知らされて駆けつけるアルセーニェフ。
デルスを埋める穴が雪の下に掘られていて、そのカツンカツンというシャベルの音がアルセーニェフ、そして観ているこちらの胸にも響いてきます。
・墓にはデルスの杖が刺され、それにラストのクレジットが被さり、コーラスが流れます。
森の中で、隊員たちが尊敬を込めてデルスに歌った歌です。
“わが灰色の翼の鷲よ、どこをおまえはそんなに飛んでいたんだ・・・”
久しぶりに荘厳なスケールの大きい、正統派のロシア民謡を聴いた思いがしました。
昔は、このようなロシア民謡を身近に聴いていたような気がします。
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