NHKドラマ「帽子」
2日に放送されたNHKの広島放送局制作のドラマ「帽子」を観ました。
正直、声高な反戦ドラマにはちょっと躊躇したりするのですが、出演者に興味があって録画していました。
他の方の感想を観ると、それぞれの人生を語りながらその中に反戦への思いも自然にあるという内容とのことで、とても良い評判を目にしていました。
それで安心しての鑑賞となりました。
呉で、父の後をついで帽子を作り続けている職人・高山春平役が緒形拳さん。
歳を重ねてもどこか油気が抜けない感じがしていた緒形さんが、白髪で少しボケが始まったと自覚している一人暮らしのおじいさん、その柔らかさが自然で良かったです。
時間がゆっくり過ぎて、歳をとるとはこういう空間になるのだ、とあまり先ではない(今かも?)私も、つい自分で忙しくしている今の生活と比べてしまいました。
一人暮らしで何かあればと息子が契約した警備会社の警備員・河原吾朗役が玉山鉄二さん。
緒形さんに振り回されてばかりいますが、自身も何か鬱積したものを抱えています。
ある時期まで玉木宏さんと混同していたものですが、玉山さんも玉木さんに負けない仕事をしていました。
CMで観かけるばかりで(私が観ないだけだったのでしょうが)、差がついてしまったかと思って失礼しました。
今回、緒形さんや岸部一徳さんと大ベテランとの二人のシーンが多くて、素人が言うのも何ですが、良い勉強をしていると思ったものです。
その岸部一徳さん、どこにでも現れる俳優さんだと呆れるほどに感心しています。
今回は玉山さんの父親役(病院の院長であり、再婚している)。
前妻(玉山さんの母)が家を出た事情を初めて息子に語るシーン、ワンシーンのみの出演でした。
このドラマの主役が緒形さんであることを一瞬忘れさせられたシーンでした。
その前妻で、緒形さんの幼馴染・竹本世津役が田中裕子さん。
田中さん、本当に変わらなくて、華やかな女優女優した感じはまったくありません。
昔、新聞の特集で読んだ、ご主人(沢田研二)と何も話さないで二人で夜空を眺めているというエピソードをいまだに覚えています。
胎内被曝者でいまガンの末期にいる役ですが、暗さとか絶望感とでは無く、淡々として柔らかで、帽子屋を止めようとする緒形さんを励ます姿が素敵でした。
自分を捨てた母親に逢うことに抵抗を感じながらも、息子に逢いに行く(帽子屋をついでもらうため)緒形さんと上京する河原。
結局、二人で逢いに行くことに・・・。
偶然先に世津と逢ってしまった春平・・・そのシーンでなぜか泣けそうになりました。
二人が静かで柔らかで、その空気感にやられました。
公園で、世津が大事にしていたミニチュアの帽子が箱から出てきたシーンでは、ますます・・・。
“幸せにしとるよ。この帽子のおかげで・・・”
春平の作ったその帽子、そして、春平が病弱な彼女を背負いながら言った“のほほんと生きろ”・・・。
“生きているうちは、のほほんと生きよう。そうしてきたのだから” 独り言のように言う世津。
岸部さんのセリフにもありましたが、当時胎内被曝者であることで受けた差別や苦労がにじみ出る言葉でした。
世津が就職のために広島へ行く船を、春平が見送れなかった事情を二人は語り合います。
“呉に残って自分と結婚を”と言いたかったのに、急な帽子作りで間に合わなかったこと。
そこから二人の人生が分かれてしまったけれども、語り合えてよかったとしみじみ感じさせるシーンでした。
河原と世津とのシーンはシルエットだけでしたが、逆にそれが良かったと思います。
穏やかに春平に帽子屋を続けることを説得し続けた世津ですから、同じだったことが予想されます。
実際、帰りの車中で、今の仕事や生き方を肯定してもらった様子がわかります。
結局、二人に明日への希望のようなものを残して彼女は亡くなります。
ラストの春平のセリフで語られるだけですが・・・。
二人には又前と変わらない生活が戻ってきましたが、河原はちょっと明るく親切になっています。
“もし何かが変わったとしたら、明日のことを考えなくなったということだ。きょう有るのみ。”
そうつぶやく春平の言葉が身に沁みるばかりです。
ラストに流れる元ちとせさんの「空に咲く花」が印象に残ります。
カッシーニ(初回生産限定盤)(DVD付) 「空に咲く花」収録
いつか読書する日 田中裕子・岸部一徳共演
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