青いパパイヤの香り
「青いパパイヤの香り」 公開:1994年/フランス・ベトナム合作映画
監督:トラン・アン・ユン
脚本:トラン・アン・ユン
撮影:ブノワ・ドゥローム
音楽:トン・タ・ティエ
出演:トラン・ヌー・イェン・ケー リュ・マン・サン トルゥオン・チー・ロック
ヴォン・ホア・ホイ グエン・アン・ホア
*'93年カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)受賞
*'94セザール賞新人監督賞受賞
*'94アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
★一言コメント★
図書館の視聴室で観るという初体験に、ずっと気になっていたこの作品を選びました。
★あらすじ★
'51年サイゴン、10歳の娘ムイ(リュ・マンサン)が田舎から奉公に出てきます。
何もしないで楽器だけを楽しむ父、生地屋を営み家計を支える母、社会人の長男と2人の幼い男の子、そして口うるさいけど、夫と娘を亡くして以来閉じこもる祖母。
その家の召使として働くムイ。
ムイは、家に遊びに来る長男の友人クェン(ヴォン・ホア・ホイ)にほのかな恋心を抱きます。 そして、10年後、長男は結婚をし、ムイは暇を出され、新進作曲家となったクェンの家で奉公をすることになります。
★おすすめポイント★
・トラン・アン・ユンは、12月公開の「ノルウェイの森」(原作:村上春樹/出演:松山ケンイチ 菊地凛子)の監督でもありますね。
そのことも、この作品を観たくなった理由のひとつかもしれません。
・静かな映画ですね。
ムイの部屋から見える、みずみずしい緑の木々、大きな実のパパイヤ、そのパパイヤからしたたる白い樹液、蟻や蛙・・・
ムイは、家事の合間に、そんな自分を取り巻く自然を見つめ続けていきます。
10歳のリュが何とも可愛らしくて、その自然な表情に惹きつけられます。
・パパイヤの実は皮をむき細い繊維にして食卓に乗せるんですね。
残った実は捨てるようです。
ムイがそれを割って、ぎっしりと詰まった白い種を覗き込むシーンが二度ありました。
こんなシーンの積み重ねで、ゆっくり時間が進み、ストーリー(があるのか、無いのか)を忘れてしまいます。
・淡々と描かれる料理や掃除をしているムイ、一家のそれぞれの生活・・・。
父の家出、苦労を背負いながらも祖母に責められる母、それを見て心を痛める次男、ムイに悪戯ばかりする三男、そして父の死・・・
あまりに映像が淡々としているので、見逃してしまいそうな一家の生活が描かれています。
・部屋に籠もる祖母を、ひたすら想い続けている老人も登場します。
遠くから見守るその奥ゆかしさ、その佇まいが印象的です。
彼も映像の中に違和感なく溶け込んでいましたね。
・10年後、想いを寄せていたクェンのところで奉公をするわけですが・・・
相変わらず、物静かに家事をこなし、クェンの世話をするムイ。
想いが叶って、婚約者がいたクェンと結ばれます。
わがままで自由奔放のお嬢さんに見えたその婚約者が、クェンの心変わりを察して、雨の中に飛び出していくシーンが印象的でした。
淡々とした映像が続いていたので、彼女の登場で画面が一転していましたね。
その彼女が飛び出した後に、窓の外からピアノを弾くクェンと静かにあたりを片付けているムイを見て泣いています。
やつで?の葉に雨粒があたり、大きな音を立て続けています。
こちらの胸に響くような音でしたね。
このあたりの緑の使い方が、とにかく印象に残る作品です。
・人は、親を含めて、回りに育てられるものでしょうけど、この作品を観ていたら、自分で自分を育て上げるものでもある、と思わせられました。
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