「上を向いて歩こう~日本人の希望の歌 その真実」
「上を向いて歩こう~日本人の希望の歌 その真実」
NHK総合 7月18日放送
「上を向いて歩こう」は、当時レコードを買って、よく聴いていました。
当時は、悲しいことや切ないことを共有している感覚で聴いていましたね。
震災後、被災地の皆さんが歌っている映像を観かけては、その度に何とも切ない想いを感じています。
希望の歌、前向きに生きるために、との想いで歌っていると知って、ちょっと救われる気持ちはしましたが・・・。
黒柳徹子さんの、“みんなの喜びもあるんだけど、みんなの悲しみもやっぱり吐き出させるものもあるんじゃないですかね”というコメントが一番しっくり来ました。
このとき、インタビューを受けている黒柳さんは突然の涙を見せています。
これまで黒柳さんの姿を映像でたくさん観てきていますが、このときほど共感を覚えたことは無かったような気がします。
「上を向いて歩こう」は、永六輔さん(作詞)、中村八大さん(作曲)、そして坂本九さん(歌)の689トリオが作り上げて、全米1位までなって世界中で歌われた歌・・・。
あまりに有名過ぎて、今更と思いながら番組を観ていました。
でも、初めて知ったことがたくさんありましたね。
中村八大作品集~上を向いて歩こう~HACHIDAI SOUNG COLLECTION1952~199
三人の因縁・・・
中村さんが、渡辺晋さん(渡辺プロ創始者)から映画音楽を依頼され、偶然遭遇した早稲田大学の後輩・永さんと一晩で10曲作った、という。
放送作家になっていた永さんも初めての作詞で、でもその中の1曲が「黒い花びら」・・・。
あのレコード大賞の第1号の曲は、永さんが20代で書いた詞なんですね。
その映画に脇役で出演していたのが、当時17歳の坂本九さん。
「上を向いて歩こう」(1961年)は、中村さん30歳、永さん28歳、坂本さん19歳で、発表された曲でした。
その若さで、永遠に残る歌が生み出されたことに驚いています。
発表当時、永さんが九さんの歌い方を気に入っていないという話は聞いていました。
あの“あ~るこおうおうおうおう”は中村さんの細かな戦略でもあったようですね。
中村さんの後世にも残るような丁寧な曲作り・・・
永さんの60年安保のデモや市民運動への挫折感・・・
そして、九さんの明るいキャラクター・・・
それが合わさって出来たのが「上を向いて歩こう」という歌でした。
中でも、注目したのは永さんの挫折の部分でした。
デモや市民運動から無残な気持ちで帰ることの繰り返しで、権力や暴力が圧し掛かってきた、そんなときの心境・・・
今聴いても、永さんの想いが一番染み込んでいる曲のように思えます。
翌年公開された映画「上を向いて歩こう」のエンディングでは、実際の歌詞には無い“冬の日”が歌われているんですね。
九さんを始め、吉永小百合さん、浜田光夫さん、高橋英樹さん、渡辺トモコさん(懐かしいですね)たち若者が揃って歩くシーンで、歌詞もあくまで“共に前へ”、“希望”を見せる前向きなものでした。
そのシーンの動画は、こちらでどうぞ。 ⇒ YouTube動画:映画「上を向いて歩こう」
永さんがインタビューで、“12歳の男の子が、泣くのを我慢している表情が好き”と語っています。
ひたむきな気持ちで、辛さを我慢している・・・“今度の被災地にもそういう少年がいっぱいいて、そういう顔がいっぱいあります”とも・・・。
「上を向いて歩こう」が大ヒットして、その後世界的なヒットになっていく経緯も紹介されています。
アメリカでは、日系人やその他の移民たちがラジオへリクエストをして始まった人気でした。
この曲を“誇り”と語る日系人たち、強制収容所に入った経験もある人たちの話に、当時もまだまだ差別や偏見があったことを思い知らされました。
この番組を観て、何より嬉しかったのは、永さんが声を取り戻していると思えたことです。
パーキンソン病と知る前に、久しぶりに聴いた「誰かとどこかで」(TBSラジオ)で別人のような声に驚かされたものでした。
病気を知って、ますます聴きにくくなっていましたし、聴くことが怖いと思っていました。
だから、ある程度覚悟を持って観た番組でした。
本当に良かった、と心から思っています。
並大抵のことではないリハビリなどを続けているのでしょうが、どうかお元気でと願わずにはいられません。
最後まで、九さんが日航機事故で亡くなったことは語られませんでした。
中村さんの死も語っていないので、テーマと直接関係ないからとも思いますが、何となく気になりました。
九さんの笑顔、当時は何とも思っていなかったのに、今になって観ると本当に癒されます。
九さんのことで、必ず思い出す写真があります。
東北の田舎の民家を訪問した九さんが、縁側でファン二人と歓迎の横断幕を持っている写真です。
“歓迎”の文字が“観迎”になっていました。
九さん、数限りなく見ている文字で、その間違いに気がつかなかったはずはありません。
それでも嬉しそうな地元の二人に挟まれて、ニコニコして写真におさまっている九さん。
私の中の“九ちゃん”は、その写真の中の九さんです。
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