NHK「ふたり〜コクリコ坂・父と子の300日戦争~宮崎駿×宮崎吾朗~」を観て
「ふたり〜コクリコ坂・父と子の300日戦争~宮崎駿×宮崎吾朗~」
NHK総合 8月9日放送
宮崎駿&吾朗親子の葛藤が描かれたNHKのドキュメンタリー「ふたり〜コクリコ坂・父と子の300日戦争~宮崎駿×宮崎吾朗~」を観ました。
番組の詳しい内容は、こちらでどうぞ。 ⇒ ふたり NHK夏ナビ
アニメが苦手で、スタジオ・ジブリの作品も「となりのトトロ」(1988年)以外に観たことがありません。
それでも、宮崎駿監督を知っていますし、ずっと気になってもいます。
映画を作れば大ヒットし、テレビを観れば嫌でも関連の情報が耳に入ってきますが、ミーハーの私が、どこか冷静な距離を置いた感覚で見続けてきているのが宮崎監督でした。
それにはちょっと理由があるのですが、それは後述しますね。
番組は、「コクリコ坂から」を制作したこの一年近くのドキュメンタリーですが、作品が出来るまでの監督と息子の吾朗監督の葛藤が描かれています。
その中で、幼い頃からの父と子の関係も細やかに描かれていました。
今も残っているというスケッチ、その中でも、絵が大好きな幼い吾朗監督を膝に抱いて、二人で絵を描いているスケッチが印象的でした。
父親は息子を喜ばせるためにアニメを作った・・・
やがて、仕事が順調になり、家庭から父親が消えてしまった・・・
そんな父親のアニメを観て育った息子は、自身も監督を夢に見ながら、有名で偉大な父親とはまったく違う世界に生きようとした・・・。
それでも、運命に引かれるように、偉大な父親に挑戦する立場に覚悟を持って、今同じ監督として生きている。
↑ 宮崎監督が息子のために作ったと紹介されています。
どんな世界でもそうなのでしょうが、親と同じ道に進むことは相当のプレッシャーですね。
その厳しさに観ている側が引いてしまいそうでした。
吾朗監督、逃げないと決めたのでしょうね。
「ゲド戦記」(2006年)での監督デビューに猛反対した宮崎監督、今回も冷たく厳しく突き放そうとする姿勢を見せていますが、時にはさりげなくヒントを与えたりしています。
息子と距離を置きながらも、毎日作業部屋をのぞいたりしていますが、スタッフにもらった金平糖を何気なく吾朗監督に分けているのが印象的でした。
息子の仕事を遠くに見ながら、イライラしたりしている宮崎監督の姿は、父親以上にアニメの世界の巨匠の姿でもありましたね。
かなり怒りっぽい姿を見せていました。
そのことが大きく現れたのが、3月11日の東日本大震災直後の様子でした。
7月公開に合わせて、ギリギリの作業中のこと・・・
会議で決まった、計画停電やスタッフの事情で混乱すると考えての休業について、一人猛反対をしています。
“生産点を放棄するのか”
“こういうときこそ、神話を作んなきゃいけないんですよ”
“すべきことは目の前の仕事で、作り手としての覚悟”
“こういう事態が起こった後の日本に、堪えられる映画を作れるかどうかだから”
結局、休業は中止して通常出社になります。
監督からの差し入れに、笑顔を見せるスタッフ・・・。
正直、この映像を観て、複雑な思いが沸きました。
ハッキリ書いておきますが、映画が完成した時に、宮崎監督が声をつまらせながら、“何かの支えになってくれたら”と挨拶しています。
その上で、のことですが・・・。
3月11日、あの日一瞬にしてこれまでの日常を失くした、家族を亡くした人たちがたくさんいました。
でも、当然ですが、圧倒的に日常が続いている人たちの方が多かったんですね。
それでも、その人たちの間でも、ほんの一瞬、何かが止まったと思っていました。
あの時、芸能人や芸術家が、自分の仕事の意味(こんなことをしていていいのか、生きていくのに必要なことなのか)を考え、何が出来るかを考えたとよく聞かれましたね。
そして、自分に出来ることとして、自分の仕事での支援を、と動き出しました。
そこまでにある程度の時間が必要でした。
それが普通の感覚に思えました。
いまだに何もしていない私が言うことでもないのですが・・・。
あの日、止まることなく動いていた宮崎監督の姿に、またひとつ距離を感じてしまいました。
尋常でない“強さ”に圧倒されたのかもしれません。
手塚治虫さんが亡くなったときに、宮崎監督だけが批判的なコメントを残したと聞いています。
人が亡くなったときには、その人の悪いことを言わないのが暗黙のルールになっていますね。
でも、宮崎監督は違っていました。
確か、手塚さんがテレビアニメの制作を受注する際に、安価で引き受けたためにその後に悪影響を与えたという内容でした。
そのときも強い人だ、信念の人だと思いましたね。
正直、手塚さんの「火の鳥」が好きで、信奉していた?ようなものだったので、嫌な気持ちはしましたが・・・。
今回のような番組もつい観てしまうのは、そんなことを引きずっているせいかもしれません。
またひとつ引きずるものが増えた気がします。
ただ、監督がパソコンの画面を見る時にメガネを外していている様子に共感を覚えましたね。
こちらも同じ状況ですから・・・。
もちろん、作品が完成するまでの紆余曲折が観られたことは面白かったですね。
親子関係を別にしても、プロデューサーや作画監督やスタッフがいての作品作りだということもよくわかりましたし・・・。
作品を作り続ける理由を聞かれた二人の監督・・・
父“作品を作っているときだけが生きているときだから・・・”
息子“闘う男であり続けるのが、生きていくことになっていると思うんですよ”
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