半村良著「湯呑茶碗」読了
半村良さんの「湯呑茶碗」(1991年発行)をやっとのことで読み終えました。
毎朝10分の音読だけの積み重ねですから、仕方がありませんが・・・。
なぜか読み始めの頃に感想を書いていて・・・
記事はこちらです。⇒半村良著「湯呑茶碗」を読書中 2013.11.28.
最初は、シミやヤケがある古本だったので、そのまま処分しようかと思ったものでした。
500ページを超える厚さでしたし・・・。
登場人物が多すぎて、記憶力が衰えている私には、遡ってページをめくることの多い小説でもありました。
今、捨てないで、読んでよかったとしみじみと思っています。
東京郊外の6階建てマンションを舞台に、住民たちの悲喜こもごもが描かれています。
住民が多すぎて、当然描かれ方に厚さ薄さがあります。
管理人が軸になっているとはわかりますが、誰が主人公かなかなかわかりにくくて、それがまた読書意欲をかきたてたりもしていました。
ラスト間近になると、各部屋(各家族)の描写がかなり端折った感じで、それだけ加速がついてラストが近いのだとは思わせますが・・・。
ラストの章は、このためにこの長い小説があったのだ、と思わせるものでしたね。
展開がわからずに、息を飲むようにして(音読ではなく、黙読で)読んでしまいました。
これからこの本を読もうと考えている方は、次にネタバレになりますので、注意してください。
真面目に働き続けて定年を迎えた夫とその妻が主人公でした。
傍目には、穏やかに何の苦労もない老後を暮している夫婦に見られています。
しかし、退職金だけで老後を生きることは出来ないし、3人の子供や他人に迷惑や面倒をかけて生きていくつもりもない。
3冊だけの自分史を作り、子供たちに500万円とともに残し、すべてを綺麗に処分し、思い出の地で死ぬことを考えています。
自分史は3章(夫・妻・夫婦)に分かれていて、それだけでも几帳面というか、真面目過ぎるというか、二人の生き方が十分に伝わってきますね。
その日、部屋を綺麗に片づけて、水道の元栓まで締めて、何度も点検に出し直前に洗車までした車で二人は出かけて行きます。
途中も、これまでと変わらない穏やかな夫婦の会話が交わされています。
そして、思い出の湖畔で・・・
錠剤を“先に飲んでくれ”という夫、間を置いて“嫌です”と答える妻・・・。
その後の押し問答も、日常の続きのような会話に思えるもので、正直読んでいて唖然としてしまいました。
そして、ホッともしました。
2時間ドラマのような展開を期待している人には物足りないかもしれませんが、私は好きですね。
“ないほうがやりなおせます” “湯呑茶碗だけは取ってあります”
長い人生、ただただ付いてきたはずの妻の強さが発揮されて、気持ちのいいエンディングになっていました。
現実には、この後が大変なのでしょうが・・・。
それにしても、誤植の多い本でしたね。
普通は、あっても1,2か所だと思うのですが、少なくても10か所以上は見つけました。
誤植が無いのが当たり前みたいに感じていた今、逆に貴重な気がしてきたものです。
保存決定となりました。
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半村良著「湯呑茶碗」を読書中 2013.11.28.
僕らの青春 [半村良]
八十八夜物語(上) [半村良]
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