土曜ドラマ「足尾から来た女」前後編
前後編で放送されたNHK土曜ドラマ「足尾から来た女」を観ました。
明治末、足尾銅山の鉱毒で故郷(栃木県谷中村)を離れざるを得なかった女性・サチを尾野真千子さんが熱演しています。
何より、その時代背景や彼女が関わる人物たちの生き方を興味深く観ることが出来ました。
簡単に言えば、彼女が逆境にもめげず、人々との関わりの中で、最後は自分の人生に新たに一歩(それも、本当に一歩)を踏み出していくだけの話なのですが・・・。
尾野真千子さんは、さすがですね。
若手の中でも抜群の存在感、安定感があって、安心して観ていられます。
メーキング映像で、柄本明さんが“良い仕事が来る女優”と評していましたが、その実力があってということでしょう。
「萌の朱雀」(1997年)の素人々々していた演技(そういう演出でしょうけど)が懐かしいですね。
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社会運動家・福田英子を演じた鈴木保奈美さんには驚かされました。
トレンディドラマで可愛い女性を演じていた、ほとんどお人形さんみたいだった人が、本物の女優になっている!と思ったものです。
「あさイチ」のプレミアムトークも観ましたが、大人の女性の匂いとか生の部分を感じさせ、それもバックにしっかりした生活があってこそ、と感じさせて驚くばかりでした。
それまでは、復帰の理由(ご主人の石橋貴明さんの仕事云々)を取りざたされていたこともあって、どこかミーハー気分で観たことをちょっと反省しています。
これからも女優として、もっともっと良い仕事を続けていってほしいと思いましたね。
鉱毒反対運動の中心となった田中正造役・柄本明さんは、やはり凄かったです。
素晴らしい俳優さんであることはわかっていましたが、今回ほど“そのまま”と感じたことはありませんでした。
何だかあのまま谷中村で、白髪・白髭を風に揺らせながら、飄々として生きていっているような気がしたものです。
私でも知っている有名人の名がいろいろ挙がっていましたが、まさかの石川啄木の登場には驚きましたね。
演じているのが渡辺大さん、熱演をするとやはりお父さん(渡辺謙)がダブってしまうのは私だけでしょうか。
妻子を函館に残して東京に出てきたものの、思うようにいかなくて自堕落な生活を送っている啄木・・・。
そのあたりは知っているので、ドラマとして納得してしまいました。
サチに愛想を尽かされたかたちで、女の部屋で一人呆然としている啄木の姿は、なぜか芥川龍之介を思わせましたね。
予想外の俳優さんがもう一人いて、金井勇太さんでした。
戦争で頭を怪我した青年で、英子の母(藤村志保)と同じ病院の入院患者役です。
たった2つのシーンだけでしたが、印象に残りました。
怪我のせいで神経に少し異常があるけれども、本来の優しさのようなものが覗きます。
彼を看病し続けてきた名もない看護婦さんも印象に残りましたね。
激動の社会、それぞれに苦難の道でありながらも生き生きとしている登場人物に隠れることが無く、彼らのシーンがあったことが何とも印象深かったです。
もしかして、唐突なシーンだったのかもしれませんが、サチが見聞き、体験したこととして、彼女の今後の生き方への大切なシーンのひとつだと思いたいですね。
背景となった足尾銅山の鉱毒事件ですが、観ていてどうしても原発後の福島の人々を重ねてしまっていました。
帰りたいのに帰れない故郷、今何とも辛い現実があります。
鉱毒に消えた谷中村―田中正造と足尾鉱毒事件の一〇〇年
塙 和也
辛酸―田中正造と足尾鉱毒事件 (角川文庫 緑 310-13)
真の文明は人を殺さず
田中正造と足尾鉱毒事件を歩く
公害の原点を後世に―入門・足尾鉱毒事件
田中正造文集〈2〉谷中の思想 (岩波文庫)
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「足尾から来た女」公式サイト
<鑑賞メモ>
土曜ドラマ『足尾から来た女』
【放送】2014年1月18日(土)・25日(土) 午後9時~10時13分[総合・各73分]
【出演】尾野真千子
鈴木保奈美 北村有起哉 渡辺大 岡田義徳 尾上寛之 玄覺悠子 金井勇太
/ 松重豊 原沙知絵 / 國村隼 / 藤村志保 柄本明 ほかの皆さん
【脚本】池端俊策(オリジナル作品)
【音楽】千住明
【演出】田中正(NHKドラマ番組部)
【制作統括】高橋練(NHKドラマ番組部)
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