眉村卓著「僕と妻の1778話」読書中
眉村卓さんの「メモリアルセレクション52 僕と妻の1778話」(集英社文庫)を読書中です。
眉村さんといえばSF作家ですね。
昔は奇想天外のSF小説が好きだったのですが、なぜか年を経るごとに苦手になってきていて、ほとんど縁が無くなっていた作家でした。
この本には、がんを宣告された奥様のために毎日書き続けたショート・ショートの一部が掲載されています。
奥様のことは、映画化(「僕と妻の1778の物語」2011年)もされているので、知っている人も多いでしょうね。
私は映画もDVDも観ていません。
死が現実的な問題になってきた年代になると、結構きついのです。
同じ草なぎ剛さん主演のドラマ「僕の生きる道」(2003年・フジテレビ系)は、個人的には「ハゲタカ」(2007年・NHK)とともにいまだにベスト作品なのですが、購入したDVDを一度も観ていませんし・・・。
ただ臆病なだけなのかもしれません。
話がそれましたが・・・
この小説は、奥様に読んでもらうためということで、SFでもかなりソフトで、日常から離れていない話の集まりになっています。
眉村さん自身、制約をもうけて書いたということですから、私などでも読みやすくなっています。
僕と妻の1778の物語 スタンダード・エディション [草ナギ剛]
中でも、828話「青白い棒」が好きですね。
家族以外の人間が棒に見えるという話です。
彼は人づきあいが苦手で、就職試験も10何回も落ちています。
次の面接をどうしたらよいかと先生に相談し、結果そのまま受けて内定をもらい就職が出来ました。
症状は改善し、今はみな同じ青白い棒にしか見えなかった会社の人の顔を、初めから覚えなおさなければならないのに少々苦労をしている・・・。
元気に頑張っていると先生に便りを送ってきます。
私などは昔から人の顔を覚えるのが苦手で、人づきあいも苦手で、SFというよりも、とても身近で共感を覚える話でした。
次の842話「最悪の事態」がまた身近で・・・。
大地震でマンションが半壊、自身は入浴中で裸で飛び出してしまったSの話。
それ以降、強迫観念のとりこになってしまって、何をするにも最悪の事態を考えて悩み、他人に訴えて回るという。
Sと一緒に出張することになった“ぼく”は、新幹線での3時間の過ごし方を事前に考えます。
Sが考える最悪の事態以上の事態(地球そのものが無くなる、など)を語り聞かせます。
元々優秀なSは、その後開き直ったように仕事をして、偉い人になっていきます。
これも、何とも身につまされる話でした。
最初の話は、学生たちの反応はあまりなかったと後述していますが、反応するのは年齢的なものでしょうかね。
読書しながら、一話一話、奥様はどんな思いで読んでいたのだろうとつい考えてしまっています。
時には眉村さんさえその思いがわからなかったのですから、こちらが思いを測れないのも当然ですが・・・。
私の読書は、相変わらず声が出にくいためのリハビリとしてのものです。
主治医には“効果は無い”とハッキリ言われているのですが、代わりに得られるものは確かにあると思いますね。
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