NHKスペシャル「見えず聞こえずとも～夫婦ふたりの里山暮らし～」

NHKスペシャル「見えず聞こえずとも～夫婦ふたりの里山暮らし～」   
                                             NHK総合  5月3日放送（6日再放送）

   

 

昨年の夏から今年の春まで、丹後半島の山間に住む60代の夫婦を追いかけたドキュメンタリーです。   
語りは、女優の樹木希林さん。    
   
目と耳が不自由な妻と、その夫は、手を触れ合いながらの触手話で意思を伝え合います。
夫は山中の荒れた土地を借り、少しずつ開墾し、農薬や化学肥料を使わずに農業を続けています。    
宮澤賢治やトルストイに憧れ、“人間は農業が基本だ”と考え、武者小路実篤の新しき村に参加したこともあるとのこと。    
その後、全国を放浪し、見つけたのが現在の丹後の地･･･。    
   
妻は、2歳で耳が不自由になり、30歳過ぎに視力が衰え、50代にはかすかな光しか感じられないようになります。    
和裁師の資格があり、今も裁縫の頼まれごとがあるようです。    
   
一度目の離婚、自殺は二度･･･。    
当時を“暗い中、迷いながら歩いているようだった”と･･･。    
40歳ごろ、眼科の先生の言葉    
“心の中に目があるから、心の持ち方が非常に大事だ”    
今ならよく理解できると語っています。
   

 

二人の結婚生活は14年、50歳を過ぎてからの結婚･･･。 
衣食住を作っていく喜びとは別に、困っている人を助けたり、お互いに助け合うことが必要だと感じた夫が、目の見えない人を支える活動に参加したことから、二人は知り合いました。   

古くても綺麗に磨き上げられた台所を明るい日差しが照らしています。    
窓辺には小さな植物が置いてあり、手で触り芽が出たと喜びの会話をしたり･･･。    
そして、農作業に出かける夫のために弁当を作る妻。    
ウインナーを切り、ガスをつけ、フライパンで焼く･･･どの作業も手で触り、熱を感じながら･･･。 
   
夫は農作業に出かけ、妻は掃除。    
昼は、特別仕様のパソコンで、お互いにメールでたわいの無いやり取りを･･･。    
でも、順調な生活だったわけではないことが語られます。    
   
結婚当初は田畑のある山中の家に住んでいました。    
そこでの生活は妻にとって負担になり、ぶつかり合うことが多かったようです。    
悩んだ末に山を下りてきたものの、今度はスーパーの買出しなど、夫にとっての負担が大きくなっていた。    
それでも、“相手が苦しければ、自分が良くても喜べない。相手の価値観を受け入れていく”と･･･。    
   
雪が解けた春、二人で山の家に行き、夫は屋根瓦などの修理、妻は掃除をしながら宝探し。
ホワイトデーのプレゼント、小さな熊のぬいぐるみをうれしそうに見せる妻。    
忘れていた、と笑う夫。    
   
常に手を取り合って会話をする二人。    
毎朝、妻の楽しみだという朝ドラを解説する姿があります。    
「花子とアン」から「まれ」へ･･･。    
日常が続いています。    

   

    
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終始、夫の柔らかな表情が印象的でした。    
葛藤を乗り越えてきたからこそ、今慈愛とも感じられる表情が出てくるのでしょうか。    
デビッド・ミッチェル氏の表情にも似て、とても印象に残ります。    
   
余談ですが･･･    
デビッド･ミッチェル氏とは、アイルランド在住の作家です。    
「君が僕の息子について教えてくれたこと」（NHK総合）で知りました。    
息子さんが自閉症で、東田直樹さんの「自閉症の僕が跳びはねる理由」（THE REASON I JUMP）を翻訳しています。    
東田さんのエッセイから息子を理解できた、そう語る氏の柔らかな表情は、苦悩を乗り越えてきた今、愛情に溢れた穏やかな心境を感じさせていましたね。

君が僕の息子について教えてくれたこと [デイヴィッド・ミッチェル]

自閉症の僕が跳びはねる理由 [東田直樹]