武田百合子著「日日雑記」を読む
毎朝、武田百合子さんの「日日雑記」(中央公論新社)を音読しています。
声が出にくいためのリハビリのつもりですが、脳の活性化にも良いみたいですね。
武田百合子さんは、作家・武田泰淳氏の奥さん。
二人とも、すでに亡くなっています。
たまたま読んでいた「文章のみがき方」(辰濃和男著・岩波新書)で紹介されていなければ、縁のないまま、知らないままに終わってしまっていたでしょうね。
“何も書くことがなかったら、その日に買ったものと天気だけでもいい。面白かったことやしたことがあったら書けばいい。日記の中で述懐や反省はしなくてもいい。・・・自分が書き易いやり方で書けばいいんだ”
百合子さんに日記を書くことをすすめた泰淳氏の言葉です。
それにこたえるように、何ということもない日常を、肩の力が抜けた自然体で、事細かに描写している百合子さんの文章・・・。
何もない日常を柔らかな感性でとらえて、気どったり、逆に品を落としたりもしないで、淡々と綴っています。
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何よりの驚きは、表現の細かさですね。
溢れる感性をこれだけ細やかに表現していることに驚かされます。
記憶力が抜群なのか、それとも常にメモを取る習慣があるのでしょうか。
娘さん(Hと表現)と行った寿司屋で食べたネタの順番とか、テレビで観た大相撲の優勝力士への賞品などの内容とか・・・。
賞品についてはメモを取ったようですが、その10年前に作家・色川武大さんと行った場所での記述が凄かったです。
枡席での様子や食事・お土産など、微にいり細にいり、という文章で、まるでこちらがその場に居合わせている感じがしたものです。
ちょっと横道にそれますが・・・
枡席で色川さんが何度も居眠りをする様子が書かれています。
百合子さんは、当時色川さんが難病を患っていたことを知っていたのでしょうか。
文章がとてもやさしく感じられました。
“ある日。”で始まる日記・・・。
情景や他人の行動を見る目、感じることに細やかさ、柔らかさがあって、とても細かな描写の連続なのに、不思議にすんなり読み進められます。
“だ・である”調なのに、紋切り型でも冷たくもなく、気持ちがいいですね。
テンポが心地よくて、逆に彼女の生きた時代、書かれた時代がわからなくなったものです。
昭和天皇の崩御や美空ひばりさんの東京ドーム公演の話があって、同じ時代を生きていたことを知りましたが・・・。
たびたび話題が出てきて、印象的だったのが映画鑑賞のことでした。
頻繁に映画館に通ったり、ビデオを借りたりしていますが、松本清張ものだったり、ホラー系だったりして、何とも親近感がありましたね。
「日日雑記」は、1993年に亡くなった百合子さんの最後の作品でした。
この本にも富士山麓の別荘での暮らしが書かれていますが、「富士日記」も読んでみたいですね。
もともと表現力に乏しいのに、年齢的なことも重なって、文章の書き方に悩んでいました。
どうしても、好みの本、好みの作家のものに偏ってしまい、世界が狭かったとつくづく思っています。
これを機会に幅広い読書を心がけたいと思いましたね。
せっかくたくさんの本があるのに、もったいないですから・・・。
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