「人生を三度生きた女 “魂のブルース”アルバータ・ハンターの生涯」を読む
「人生を三度生きた女 “魂のブルース”アルバータ・ハンターの生涯」(ヤンソン由美子 訳/筑摩書房)を読み終えました。
声が出にくいため、リハビリの音読用として、刻み刻みの読書でしたから、時間もかかりましたね。
分厚い上に、当然のことですがカタカナの名前や場所の記述が多すぎて、頻繁にさかのぼっては確認するという、かなり苦労した読書でした。
これまで、アルバータ・ハンター(1895-1984)という歌手をまったく知りませんでした。
以下は、帯の紹介記事です。
「12歳から歌いはじめ、世界のトップスターダムにのぼりつめた後、60歳で看護婦に転身。その後20年の看護婦生活を経て、82歳で退職させられるや再び舞台に返り咲き、“アメリカの国宝”といわれるほどの絶大な人気を博した黒人ブルースシンガー、アルバータ・ハンター。生きる勇気と励ましに満ちた生涯の記録。」
この文章だけでも圧倒されるのに、中身の濃さには驚くばかりでした。
著者(フランク・C・テイラー)が、彼女が亡くなる前の数ヶ月間、インタビューをし続けて書き上げたものです。
彼女が長い生涯に集めておいた物がいっぱい詰まった、帯びただしい数の段ボール箱や紙袋に囲まれてのインタビューだったとか。
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Remember My Name Alberta Hunter ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
激しい人種差別の時代、戦争という不穏な時代を生き抜いたアルバータ。
彼女の成功までの軌跡やその後の活躍、ヨーロッパまで頻繁に遠征しての活躍など、年月日から始まって、事細かなエピソード(公演や人々との交流、時勢の中での言動などなど)が綴られています。
読み進めるたびに、段ボール箱や紙袋の膨大な中身を思い、感動しましたね。
全体を通して感じることは、彼女は背筋のシャンとした、どんなときにもブレない人だったということですね。
今などよりもずっと人種差別の激しかった時代に、常に自分を信じ、負けずに前を向いて歩いていた人。
決して他人におもねたりせず、逆に批判したりもせず、困難にあっても常に乗り越えることを考えていた人、だったんですね。
それに、よけいなことは言ったりしない、奥ゆかしさを持ち合わせ、陰ながら、常に誰かのためにできることをする、そんな人でもあったようです。
1920年代には、ヨーロッパへと舞台を広げていっていたのが、印象的でした。
今では考えられない時間と空間を越えての渡航を何度も繰り返していますが、ヨーロッパのほうが、差別無く実力を認めてくれる空気があって、生きやすかったようです。
何より、60歳にしての看護婦への転身には驚かされました。
母親の死がきっかけとはいえ、仕事への限界も感じていたようです。
年齢を12歳偽っての勉強、そのパワーには圧倒されますね。
看護婦として20年、彼女らしく誠実な生き方を通したようです。
82歳で退職して、歌手として再出発、カーター大統領の前で歌うなど、国民的な歌手となっていきます。
これだけ、濃い内容の本にもかかわらず、何となく気になっているのは、書かれていない12歳までの彼女と音楽の関係です。
生きていくためとは言え、才能が無ければ音楽の世界へは進めなかったと思うので・・・。
それとも、彼女の生きていくパワーが音楽の能力を生み出していったのでしょうか。
歳を経るごとに曲作りにも才能を発揮していっていますから、そうなのかもしれません。
表紙カバーの笑顔が好きですね。
癒しと元気をもらえそうな気がして、読み終わっても目の届くところに飾っています。
人生を三度生きた女―"魂のブルース"アルバータ・ハンターの生涯
フランク・C・テイラー ヤンソン由実子
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