いがらしみきお著「今日を歩く」を読む
いがらしみきおさんの「今日を歩く」(小学館)を読みました。
「ぼのぼの」が好きで、それとはまったく違う絵柄が不安だったのですが、読み終わってみれば、やはり「ぼのぼの」の世界がありましたね。
絵的には、かなり以前に観たローカル番組でのいがらしさんの姿そのものでした。
15年間、それも病気がきっかけで始めた散歩。
毎日30分、同じコースを歩くというのが、まず凄いですね。
毎日同じ景色を見て、同じ人とすれちがう、ほとんど “動く定点観察” という。
私のように、何とか狭い範囲でもバリエーションを作って歩いている、それでも飽きてしまう状況とは大違いです。
そのあたりが、創作者とただの散歩者との違いでしょうね。
長い時間の間には、すれ違う人々や犬猫などの様子も変化していく。
家族らしき人たちのウォーキング、人数が増えていき、そして減っていく。
何の結末があるわけでもなく、季節は移り変わり、行き交う人々に、いがらしさんの想像が膨らんでは消える。
震災で被害を受けた家から飼い猫が消え、猫よけ(なぜか不明)のペットボトルも無くなっていたけれども、いつのまにかペットボトルだけは復活している。
木の枝だと思って通り過ぎたものの、気になって戻ってみたら蛇の死骸だった。
道に平行ではなく斜めになって曲がっていてくれていたら、すぐわかったのに・・・。
何気ない変化にちょっと笑ってしまういがらしさんに、こちらも笑う。
散歩コースは中学校のそばを通るので、生徒たちから挨拶をされる。
けっこう面倒くさいが、挨拶の仕方も様々。
中でも気になるのは、いつも眉間に皺を寄せている不機嫌顔の女の子。
お互いに黙礼だけだが、大人としてきちんとした挨拶をしようとした いがらしさん。
大きい “おはよう” が、つい小さい “おはよう”になり、返されたのは、大きめの黙礼だった。
読んでいて、つい笑ってしまったのには、ほかにも理由があります。
顔が、お笑い芸人の近藤春菜さん(ハリセンボン)を連想させるからなんですが・・・。
春菜さんには失礼ですよね。
個人的に一番笑ったのは、2匹の犬を散歩させるおかあさんですね。
1匹はしつけが行き届いているのに、もう1匹はぐるぐる回りながら歩く。
見かけるようになってから何年もたつのに・・・。
おかあさんの足に絡まったり、犬同士で絡まって動けなくなったり・・・。
それでも、おかあさんはイライラしたり怒ったりしないんですね。
つい、忍耐強いおかあさんの自宅での状況を想像しているのには笑えます。
台所で料理しているおかあさんの足にぐるぐる巻きついている光景が・・・。
雪道で転んで、そのまま大の字になったままのおばさんもいます。
心配して駆けつけたら、恥ずかしそうに去っていた。
路上で仰向けで見た空が素敵だったのかもしれない。
そう想像してみるのも素敵ですね。
あとがきには、生死についての考え方が書かれています。
今生きている自分という存在、その自分を感じられるのが散歩をしているときだ、と・・・。
移ろう自然、通り過ぎる人々を見つめながらの散歩。
そこから創作も生まれるんですね。
こちらも、せっかくなのだから想像力を働かせないと、楽しまないと、と思えた本ではありました。
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