飯田茂実著「一文物語集」より
深海魚に会おうとした揚羽蝶が、海面にへばりついている。
彼は日曜日の出来事を詳細にしたためた日記を一冊書きあげるのに月曜日から土曜日までの六日間を費やして、遺産をゆるゆる食いつぶしている。
二十年あまり舞台のうえで老夫婦を演じ続けたふたりの役者が、公演打ちきりの晩、初めて舞台の外で抱き合った。
二本の並んだ切り株が、かつて見はるかした遠景や、集まってきた様々な鳥たちの想い出を、愉しげに語りあっている。
若いころ婚約していた女のもとへ長い手紙を書き送るのが男の五十年来の日課であり、ぶ厚い封書を開封せずに焼却するのが五十年来の女の日課であった。
飯田茂実著「一文物語集」より
一文物語集
飯田茂実
穂村弘さんの著書「これから泳ぎにいきませんか 穂村弘の書評集」(河出書房新社)で紹介されていたのが、飯田茂実さんの「一文物語集」でした。
その中でも、“深海魚に~” が特に印象的で、くっきりと映像が浮かび、揚羽蝶の心情にまで思いがいってしまったものです。
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短い文章、それもたった一行の文章で物語が作られていると知って、衝撃的でしたね。
早速読んでみたいと探したら、アマゾンで中古品が少し高値で出品されていました。
ちょっとためらって、図書館で探したところ、一部(0~108)収録されている「とっておき名短篇」(北村薫・宮部みゆき編/ちくま文庫)を見つけました。
108件を読んでみると、怖い内容のものが多いですね。
深読みし想像するだけで怖いので、何しろ苦手なので、比較的ストレートなものを選んでみました。
自分好みのものになりましたが、これでも結構怖いものを感じます。
短い文章で表現できるということに関心があります。
最近は、早朝の散歩中に俳句を一句は作るようにしています。
でも、あまりの下手さに、季語が!とか字数の制限が!とか窮屈でしかたがない、などと文句たらたらですね。
「プレバト!!」(TBS系)の夏井いつき先生なら、こう切り捨てるだろう、とはっきりと想像できたりしますし・・・。
一行で物語を作るのは、改めて至難の業だと感じますね。
自由じゃないかなあ、とつい安易に考えてしまった自分の甘さを反省しています。
かなり以前に、このブログには “一日一行文” というカテゴリーを設けていました。
何にも捉えられないで一行で何かを書けないかな、という狙いは良かったと思うのですが、中身はどうしようもなく、挫折しましたけど・・・。
そのこともあっての、今回の「一文物語集」への強い興味でした。
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穂村弘著「蚊がいる」を読む 2018.3.14.
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